滅亡参り
「残業が憎い……」
釘を打ち付ける。
「楽しめる趣味のあるやつが憎い……」
階段を降りて、登って、また打ち込む。
「思わせ振りに笑いかけたりしたくせに、私の純情を弄んだアイツが憎いっ!」
降りて登って、またトンカチを釘に叩きつける。
この世界は私に優しくない。だからこんな世界壊れてほしい。
思い立った私は、具体的な手順について考えた。
今の時期は夏。夏といえば丑の刻参りが鉄板中の鉄板だろう。
しかし対象は特定の個人ではない。世界そのものだ。
思案する私に神は語りかけてきた。お百度参りをすれば良いと。ネットの世界に降臨する神を信じることに多少の抵抗はあったが、信じてみるのも悪くないと思った。
人の寄り付かない寂れた神社。そこで一番大きく太い木に世界地図を貼り付け、恨み言をぶつけながら、一度釘を打っては階段を降りてまた登るを繰り返す。
「世界が……憎いっ!!!!」
一〇〇個目の恨み叩き込んだ瞬間、視界に映る世界のすべてが崩れだした。
星なんてロクに見えない真っ暗な夜空も、地面を這いまわる小さな蟻たちも、人工的に生み出された美しい夜景も。
何もかもが細かく崩れ、粒子となって何処かへ飛ばされていく。
「あは……ははははははぁはははぁはっ……」
見ていた私も、いつの間にか口が消え、最後に残った目も消えーー……。